カシダザサと言うスズザサ属の小型のササがあります。
『日本のタケ亜科植物』には、「稈は高さ50㎝、直径3㎜で、基部および上方で分枝する。稈鞘は開出長毛を密生し、葉鞘は無毛。葉は楕円状披針形で、長さ20㎝、幅2.5㎝、皮紙質、裏面に軟毛を密生する。肩毛は放射状。九州、四国から関東地方の太平洋側にかけ稀に出現する。」と説明されています。
基準産地が、大阪府高槻市樫田なのでカシダザサです。
葉裏に毛がないこと以外は、カシダザサと同じような特徴を持つササがケナシカシダザサです。
コウベコスズは、1948年に小泉源一が記載(基準産地は六甲山系の再度山)し、1977年に鈴木貞雄がケナシカシダザサの変種としました。
『原色日本植物図鑑 木本編(Ⅱ)』(北村四郎 村田源 平成20年6月30日 19刷発行 保育社に)は、ササ類の特徴も詳細に記されています。
分類は「古い」分類ですが、各種の特徴の記述は参考になります。
この図鑑では、ケナシカシダザサは葉鞘が無毛であるのに対して、コウベコスズは葉鞘に細毛が密生し、長い毛が混生する変種とされています。
『日本のタケ亜科植物』では、ケナシカシダザサの葉鞘の毛の特徴を、「葉鞘は無毛、もしくは細毛あるいは細毛と長毛を混生する。」と説明しています。
葉鞘の毛の有無程度の違いを変種とするか、変異の範疇と考えるかは、分類学者次第ですが、管見によればそれくらいの相違点で、品種ならともかく、変種にするのは不適切です。
私が見たケナシカシダザサの群落では、葉鞘に毛のある株は確認出来ませんでしたが、早期に脱落している可能性も十分にあり、来年の初夏に確かめるつもりです。
葉裏無毛のイナコスズは、葉裏、稈鞘、葉鞘の毛の有無に関して、サイヨウザサと選ぶところがないことは、既に述べました。
葉鞘有毛のケナシカシダザサは、葉裏、稈鞘、葉鞘の毛の特徴がアリマコスズと同じになります。
兵庫県南東部のセッツコスズ、フタタビコスズ、アリマコスズ、コウベコスズの小篶四姉妹の比較は、興味深い問題です。
画像はケナシカシダザサの群落のやや疎らな所です。ケナシカシダザサは、枝先に2~3枚の葉をつけ、葉にはぱりっとした張りがあります。