ケナシカシダザサとコウベコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/10/01 (Tue) 23:19:49
六甲山の某所で、9月下旬にケナシカシダザサに出会いました。
ケナシカシダザサは、スズザサ属で、「九州北部から西南日本にかけて稀に出現する」(『日本のタケ亜科植物』)小型のササです。
私が出会った群落は、百数十の稈からなる小規模なもので、稈の高さは最大で40㎝、直径は2㎜ほどです。
各節で移譲的に分枝し、葉の長さは18㎝、幅は2.5~3㎝くらいのものが多く、葉の表面には光沢があり、裏面は無毛、葉にはしわが目立ち、葉脈に沿って凹凸が明らかなものもあります。
稈鞘には開出長毛が密生し、葉鞘は無毛、節の膨らみはほとんど目立たず、葉舌は切型、肩毛は確認出来ませんでした。

画像は群落の一部を写しています。

Re: ケナシカシダザサとコウベコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/10/01 (Tue) 23:22:31
以下に特徴を確認します。
葉身の形は、アリマコスズやイナコスズより、細身のサイヨウザサに近い印象を受けました。

Re: ケナシカシダザサとコウベコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/10/01 (Tue) 23:23:53
葉脈に沿って凹凸が目立つ葉もあります。

Re: ケナシカシダザサとコウベコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/10/01 (Tue) 23:26:40
稈鞘には開出長毛があります。
9月下旬に見たためだと思いますが、脱落してあまり残っていない株が多かったです。

Re: ケナシカシダザサとコウベコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/10/01 (Tue) 23:27:52
葉鞘は無毛。

Re: ケナシカシダザサとコウベコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/10/01 (Tue) 23:30:21
次に標本を3点示します。
この標本は稈高30㎝ほどで、2つの節において移譲的に分枝しています。

Re: ケナシカシダザサとコウベコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/10/01 (Tue) 23:32:26
上の画像の移譲的分枝様式①の拡大画像です。

Re: ケナシカシダザサとコウベコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/10/01 (Tue) 23:33:39
移譲的分枝様式②の拡大画像です。

Re: ケナシカシダザサとコウベコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/10/01 (Tue) 23:34:48
この標本は、稈基部と上部で分枝しています。

Re: ケナシカシダザサとコウベコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/10/01 (Tue) 23:36:43
この標本は、稈基部と中部で分枝しています。
外鞘的分枝様式も見られます。

Re: ケナシカシダザサとコウベコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/10/01 (Tue) 23:39:55
上の画像の外鞘的分枝様式の拡大画像です。

コウベコスズについて語る必要があるのですが、今日はこのへんで失礼します。

Re: ケナシカシダザサとコウベコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/10/02 (Wed) 23:16:17
カシダザサと言うスズザサ属の小型のササがあります。
『日本のタケ亜科植物』には、「稈は高さ50㎝、直径3㎜で、基部および上方で分枝する。稈鞘は開出長毛を密生し、葉鞘は無毛。葉は楕円状披針形で、長さ20㎝、幅2.5㎝、皮紙質、裏面に軟毛を密生する。肩毛は放射状。九州、四国から関東地方の太平洋側にかけ稀に出現する。」と説明されています。
基準産地が、大阪府高槻市樫田なのでカシダザサです。
葉裏に毛がないこと以外は、カシダザサと同じような特徴を持つササがケナシカシダザサです。

コウベコスズは、1948年に小泉源一が記載(基準産地は六甲山系の再度山)し、1977年に鈴木貞雄がケナシカシダザサの変種としました。
『原色日本植物図鑑 木本編(Ⅱ)』(北村四郎 村田源 平成20年6月30日 19刷発行 保育社に)は、ササ類の特徴も詳細に記されています。
分類は「古い」分類ですが、各種の特徴の記述は参考になります。
この図鑑では、ケナシカシダザサは葉鞘が無毛であるのに対して、コウベコスズは葉鞘に細毛が密生し、長い毛が混生する変種とされています。
『日本のタケ亜科植物』では、ケナシカシダザサの葉鞘の毛の特徴を、「葉鞘は無毛、もしくは細毛あるいは細毛と長毛を混生する。」と説明しています。
葉鞘の毛の有無程度の違いを変種とするか、変異の範疇と考えるかは、分類学者次第ですが、管見によればそれくらいの相違点で、品種ならともかく、変種にするのは不適切です。

私が見たケナシカシダザサの群落では、葉鞘に毛のある株は確認出来ませんでしたが、早期に脱落している可能性も十分にあり、来年の初夏に確かめるつもりです。

葉裏無毛のイナコスズは、葉裏、稈鞘、葉鞘の毛の有無に関して、サイヨウザサと選ぶところがないことは、既に述べました。
葉鞘有毛のケナシカシダザサは、葉裏、稈鞘、葉鞘の毛の特徴がアリマコスズと同じになります。

兵庫県南東部のセッツコスズ、フタタビコスズ、アリマコスズ、コウベコスズの小篶四姉妹の比較は、興味深い問題です。

画像はケナシカシダザサの群落のやや疎らな所です。ケナシカシダザサは、枝先に2~3枚の葉をつけ、葉にはぱりっとした張りがあります。

Re: ケナシカシダザサとコウベコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/12/08 (Sun) 23:57:30
「船坂川沿いのケナシカシダザサ」に目を通される前に、こちらをご一読下さい。
(投稿前に、内容をプレビューして確認できます)