2018年の六甲山のミヤコザサらしきものの部分開花②

  • 神戸の望月
  • 2018/07/04 (Wed) 16:36:34
その後新たにミヤコザサらしきものの部分開花に4ヵ所で出会いました。
そのうちの1ヵ所で、今まで見なかった挙動を確認しました。
まずは、全景です。
左側の3つ赤い矢印は花茎を示しています。
中央や右側にも花茎が何本か写っています。
大きい花茎は120㎝ほどあります。

Re: 2018年の六甲山のミヤコザサらしきものの部分開花②

  • 神戸の望月
  • 2018/07/04 (Wed) 16:38:06
この場所では、よく分枝した大きい花序が目立っていました。

Re: 2018年の六甲山のミヤコザサらしきものの部分開花②

  • 神戸の望月
  • 2018/07/04 (Wed) 16:42:48
この画像の赤、黒、紫の矢印は地下茎から直接立ち上がった花茎を示しています。
特に赤の②の葉は花茎についた葉としては見たことがないほど大きいです。
紫の矢印の示す花茎は頂部に小さな葉をつけ、その先に貧弱な花序を出しています。
これが今まで見ていた、花茎が葉を伴う姿の典型例です。

Re: 2018年の六甲山のミヤコザサらしきものの部分開花②

  • 神戸の望月
  • 2018/07/04 (Wed) 16:49:19
そしてこの集団で見られた、最大の特徴は、葉を伴う花茎の葉耳に肩毛があることです。
通常ミヤコザサでは、葉耳に肩毛がありますが、今まで見ていた葉を伴う花茎の葉耳には全て肩毛がありませんでした。
例えば、2018年6月20日16時13分投稿の画像でも、葉耳に肩毛はありません。

この画像は、葉を伴う花茎の葉耳に肩毛のある例です。

Re: 2018年の六甲山のミヤコザサらしきものの部分開花②

  • 神戸の望月
  • 2018/07/04 (Wed) 16:50:32
この画像の花茎でも、葉耳に肩毛があります。

Re: 2018年の六甲山のミヤコザサらしきものの部分開花②

  • 神戸の望月
  • 2018/07/04 (Wed) 16:52:41
この画像も同様の例です。

Re: 2018年の六甲山のミヤコザサらしきものの部分開花②

  • 神戸の望月
  • 2018/07/04 (Wed) 21:02:39
葉を伴う花茎の葉耳に肩毛がない例として、2018年6月20日16時13分投稿の標本の画像をあげましたが、他に生時の画像をあげておきます。
葉耳に肩毛がないのが分かりやすいと思います。

Re: 2018年の六甲山のミヤコザサらしきものの部分開花②

  • 神戸の望月
  • 2018/07/04 (Wed) 21:04:14
この画像も、葉を伴う花茎の葉耳に肩毛がない例です。
やはり花序は貧弱です。

Re: 2018年の六甲山のミヤコザサらしきものの部分開花②

  • 神戸の望月
  • 2018/07/04 (Wed) 21:10:09
この葉耳に肩毛がある葉を伴う花茎が見られる集団では、花(苞穎、外穎、内穎)の色は様々です。
この画像は緑がちな花で、六甲山の部分開花では最もよく見る色です。

Re: 2018年の六甲山のミヤコザサらしきものの部分開花②

  • 神戸の望月
  • 2018/07/04 (Wed) 21:11:16
これも緑がちな花です。

Re: 2018年の六甲山のミヤコザサらしきものの部分開花②

  • 神戸の望月
  • 2018/07/04 (Wed) 21:13:20
これは、アントシアニンによる暗紫色が多く、淡く出ている例です。

Re: 2018年の六甲山のミヤコザサらしきものの部分開花②

  • 神戸の望月
  • 2018/07/04 (Wed) 21:19:07
これはアントシアニンの暗紫色が多く、濃く出ている例です。
赤い矢印は肩毛を示しています。

Re: 2018年の六甲山のミヤコザサらしきものの部分開花②

  • 神戸の望月
  • 2018/07/07 (Sat) 22:23:55
六甲山のミヤコザサらしきものは、ミヤコザサ─チマキザサ複合体の可能性が高いことについては、去年の投稿で取り上げました。

ササの雑種を考える時に、最も参考になる小林幹夫先生の文章を『日本のタケ亜科植物』から引用させて頂きます。

日本列島は北から南まで、亜寒帯、冷温帯、中間帯、暖温帯、そして亜熱帯と、切れ目無く森林植生で覆われ、海岸から山麓までの平野部や河川敷では草原地帯が広がっている。多くの場合、それぞれの植生に応じたササ群落が優占し、植生の境界では異なったササ同士が隣接する。日本産タケ亜科植物はバンブーサ連の2属を除き、染色体数がすべて4倍体の2n=4X=48本で、しかも自家受粉も他家受粉も行い、生殖的隔離がなく、隣接した異種同士が同時に開花すれば、必ずといってよいほどに雑種が形成され、発芽・成長して永続的なクローンを形成する。一般に、ササ類には数十年に一度という一斉開花枯死現象が知られているので、仮に60年毎に一斉開花を繰り返すと仮定すれば、少なくとも3600年に一度ずつは同時開花することになり、雑種の存在はごく自然な現象となる。

この画像は六甲山で、矢印でいくつか示したミヤコザサらしきものとその他多くのチマキザサが混生している様子です。
この画像ではチマキザサが優勢ですが、周囲全体ではチマキザサが劣勢です。
チマキザサは兵庫県では、中北部に多く分布していますが、六甲山では稀です。
六甲山での混生地はここしか知りません。

Re: 2018年の六甲山のミヤコザサらしきものの部分開花②

  • 神戸の望月
  • 2018/07/09 (Mon) 22:55:12
ミヤコザサには24の異名があります。
曰く、タカクマチク、イトザサ、イヨザサ、ヒコサンザサ、タノカミザサ、シラカワザサ、ロッコウザサ等々。
ロッコウザサは小泉源一により「葉裏の半分に短毛を生じ半面は無毛」として1938年に記載されていますが、他の10以上の異名も小泉による記載です。

日本産のササ類では、かつて600種以上が記載されていた時代があったようです。
それは小林先生によると、クローン内並びにクローン間の微細な変異に注目し、分類学者が先を争って命名競争に没頭したことが一因だろうと言うことです。
また、ササ属のチマキザサ節やミヤコザサ節で異名の数が特に多いのは、雑種形成による種分化(ササ属にあっては、チシマザサ節とチマキザサ節、チマキザサ節とミヤコザサ節のそれぞれの間で形成される複合体が存在する。)を考慮せず、逐一の中間形に命名していたことにも原因があるそうです。
日本におけるタケ亜科の分類は、1901年に牧野富太郎と柴田圭太によりササ属が新設された時のままなのかと言う嘆息が『日本タケ亜科植物』には記されています。
そして、そのような分類を無原則的に受け入れたかに見える「Y List」や「Gren List」などが、環境省の自然環境調査、ひいてはレッドリストの改訂作業のための基礎資料に使われていることに問題があるとも書かれています。
小林先生は2015年に、イネ科に関する「Gren List」のパブコメに応募し、タケ亜科に関する改訂意見を提出し一顧だにされなかったそうです。

Re: 2018年の六甲山のミヤコザサらしきものの部分開花②

  • 神戸の望月
  • 2018/07/10 (Tue) 21:51:50
7月8日に初めて部分開花で生じた穎果を見ました。
この場所では花茎が8本だけ上がっていて、そのうちの1本の花序に2個の穎果が出来ていました。
開花数の少なさを考えると、あるいは、自家受粉なのかも知れません。

Re: 2018年の六甲山のミヤコザサらしきものの部分開花②

  • 神戸の望月
  • 2018/07/10 (Tue) 21:53:15
この画像は、もう1個の穎果です。

Re: 2018年の六甲山のミヤコザサらしきものの部分開花②

  • 神戸の望月
  • 2018/07/10 (Tue) 21:57:50
結実した花茎の近くにまだ開花中のものもありました。
この画像がそれです。
2つの赤い矢印と黒い矢印(奥の方に曲がって伸びている)は、3裂しているメシベの柱頭を示しています。
オシベは6個です。

Re: 2018年の六甲山のミヤコザサらしきものの部分開花②

  • 神戸の望月
  • 2018/07/11 (Wed) 07:20:10
昨夜の投稿で述べた自家受粉について、書き方が不十分なので補います。
「自家」とは、遺伝的な意味での自家ですから、同じ小花のオシベに限らず、同一クローンの小花のオシベの花粉で結実した場合、自家受粉による結実になります。
おそらく8本の花茎は同一個体のもので、周囲に開花した群落が他になく、そうした意味で自家受粉に違いありません。
風媒花のササ類は、雌性先熟であるため、同じ小花の花粉が柱頭につき結実する可能性は低いと考えられます。
わずかな花茎の少ない小花で結実する確率は極めて低いはずです。
実際に部分開花で結実した例はほとんど知られていないようです。
(投稿前に、内容をプレビューして確認できます)