
ミヤコザサには24の異名があります。
曰く、タカクマチク、イトザサ、イヨザサ、ヒコサンザサ、タノカミザサ、シラカワザサ、ロッコウザサ等々。
ロッコウザサは小泉源一により「葉裏の半分に短毛を生じ半面は無毛」として1938年に記載されていますが、他の10以上の異名も小泉による記載です。
日本産のササ類では、かつて600種以上が記載されていた時代があったようです。
それは小林先生によると、クローン内並びにクローン間の微細な変異に注目し、分類学者が先を争って命名競争に没頭したことが一因だろうと言うことです。
また、ササ属のチマキザサ節やミヤコザサ節で異名の数が特に多いのは、雑種形成による種分化(ササ属にあっては、チシマザサ節とチマキザサ節、チマキザサ節とミヤコザサ節のそれぞれの間で形成される複合体が存在する。)を考慮せず、逐一の中間形に命名していたことにも原因があるそうです。
日本におけるタケ亜科の分類は、1901年に牧野富太郎と柴田圭太によりササ属が新設された時のままなのかと言う嘆息が『日本タケ亜科植物』には記されています。
そして、そのような分類を無原則的に受け入れたかに見える「Y List」や「Gren List」などが、環境省の自然環境調査、ひいてはレッドリストの改訂作業のための基礎資料に使われていることに問題があるとも書かれています。
小林先生は2015年に、イネ科に関する「Gren List」のパブコメに応募し、タケ亜科に関する改訂意見を提出し一顧だにされなかったそうです。