2018年の六甲山のスズダケ②

  • 神戸の望月
  • 2018/05/16 (Wed) 21:22:50
長くなったので改めます。

1つのスズダケのジェネットのほとんど全てのラメットが数年に渡って開花枯死したら、その後どのようにそのジェネットは更新されるのでしょうか。
穎果による更新、未開花の稈、あるいは開花を経験しても枯死しない稈による更新が考えられます。
未開花の稈を2つに分ければ、開花初年以前に地上に出ていたもの、開花期間中に地下茎から出て来たもの、と言うことになります。
今後数年の観察をしなければ結論は出せませんが、ジェネット更新の考えられる形はこのようなものでしょう。

去年、一昨年私が観察した所では、開花したスズダケの結実率は低かったです。
場所によっては、全く結実しなかった所もあります。
数が頼みの風媒花であることを考えれば、より多くの稈が開花している所ほど結実率は高いような気もしますが、必ずしもそうではなかったです。

去年6月に収穫した穎果を持ち帰ってプランターにすぐ播きました。日と雨が当たる所に放置しています。
この画像は今年の5月13日に写したその様子です。
まだ動きはありませんが、カビも発生しておらず、穎果はまだ生きているようです。
休眠性があると言うことなので、気長に観察しています。

Re: 2018年の六甲山のスズダケ②

  • 神戸の望月
  • 2018/05/16 (Wed) 21:26:34
この画像は去年の6月上旬に写しました。雨の日の撮影で、スズダケの穎果が膨らんでいるさまが分かりやすいかなと思い、選びました。

Re: 2018年の六甲山のスズダケ②

  • 神戸の望月
  • 2018/05/18 (Fri) 21:51:50
今年はスズダケについているホソコバネナガカメムシが多いです。
とは言っても現場での発生数を調べての話ではありません。
標本にするために持ち帰ったスズダケにたくさんついているのです。
開花のない場所以外では、花茎を出した標本を採ることがほとんどですが、そうした標本に特によくホソコバネナガカメムシがついています。
これは私の推測ですが、今年も開花した場所で去年のホソコバネナガカメムシの産卵数が特に多かった訳ではないと思います。
そうした場所は、去年、一昨年も開花があり、多数の稈が枯死しているため、産卵時には生きていた稈に産み付けられた卵が産まれた時、その稈が枯死していると、孵化した幼虫や成虫がスズダケの「樹液」を吸うために、生きている稈(私が今年標本に採っているような開花稈)に集まって来ているのではないでしょうか。
我が家には、多い時でスズダケの標本が50点ほど、重しを載せて積んでありますが、その中から今年はよくホソコバネナガカメムシがはい出して来ます。
ホソコバネナガカメムシは、カメムシの仲間にしては、触れた時に発する匂いもそれほど強烈ではないため、見つけてはティッシュで包んで引導を渡しています。
現場で注意して見ていても、稈鞘の内部に潜んでいるものなどは、なかなか見つけられません。

この画像は、標本から出て来たホソコバネナガカメムシを写したものです。

Re: 2018年の六甲山のスズダケ②

  • 神戸の望月
  • 2018/05/19 (Sat) 22:47:04
この画像は心経岩付近で今年の4月に写したものです。
群生するミヤコザサらしきものの中に、ぽつんと1本だけスズダケが生えています。
赤い矢印の所です。
20mほど離れた所に数百ラメットのスズダケがあります。
現在の地下茎の状態は分かりませんが、おそらく元々は、赤い矢印のスズダケと20m離れた場所の集団は同じ個体だと考えられます。
なぜこのような状態になったのでしょうか。
スズダケとミヤコザサの勢力争いの結果としか言いようがありませんが、多数のミヤコザサらしきものに取り囲まれ、同種の集団から数十メートルほど離れた少数のスズダケと言うこのような構図は、特に裏六甲の高所でよく見られます。
その逆に多数のスズダケに取り囲まれた少数のミヤコザサらしきものと言う光景は見たことがありません。

Re: 2018年の六甲山のスズダケ②

  • 神戸の望月
  • 2018/05/20 (Sun) 21:02:40
例えば、住吉谷や西山谷の万単位のラメットが密に群生していて、2016年、2017年に大半のラメットが開花し、今年も開花があったようなスズダケのジェネットには、今年の開花ラメットに関して、共通した特徴があります。
それは専らジェネットの周縁部分のラメットが開花していて、中心部分はほとんど全て開花枯死していると言うことです。
ラメットが密で飽和状態になった中心部分には、より古い地下茎があり、まだその外側へと広がる可能性のある周縁部分にはより新しい地下茎があると言う判断が正しいのなら、より古い地下茎から生じた稈から順に開花したと考えられます。

画像は、結実したヌカボシソウと地下茎から直接花茎を立ち上げて開花したスズダケの2ショットです。 

Re: 2018年の六甲山のスズダケ②

  • 神戸の望月
  • 2018/05/23 (Wed) 21:46:09
5月9日の投稿で、稈の下部から花茎を出しているスズダケを紹介しました。
現在、標本は手元になく、確認出来ませんがおそらく下から5つ目の節から花茎は出ていたと思います。
スズダケの稈の基部の1つ目と2つ目の節には、通常芽が出来ません。つまり、その2つの節からは枝が出ないと言うことです。
500本以上の稈で確認したので、間違いないと思います。
稈の上部の節から出る枝ほどよく発達し、基部付近では分枝しない性質はチシマザサなども同じで、多雪地帯に適応した形態です。

この画像の先日写したスズダケは、赤い矢印の示す1つ目の節と紫の矢印の示す2つ目の節から花茎を伸ばしています。
稈の下部と言うよりは、基部付近からも花茎を伸ばした非常に珍しい例です。
緑の矢印の所には、何かの幼虫がいます。スズダケの右隣の8枚の葉をつけた植物はオオナルコユリです。

Re: 2018年の六甲山のスズダケ②

  • 神戸の望月
  • 2018/05/23 (Wed) 22:06:47
先日2ヵ所目の、回復笹らしきものの発生場所が見つかりました。
時間がなく、まだ掘ってみて地下茎とのつながりを確認出来ていませんが、近日中に再訪して確かめるつもりです。
開花枯死した多くのラメットと地下茎で繋がっていて、その回復笹が生き延び、そこからジェネットが再生して行くことが確認できて初めて、回復笹と認定できることになります。
そしてその場合、1つのジェネットの大部分の地下茎が開花により枯死しても、ごく一部の地下茎が生き残って、そこから再生する訳ですから、同じ個体が生き延びると言うことになります。

この画像の真ん中辺りに写っているのが回復笹らしきものです。
その付近の稈は全て去年、一昨年開花枯死しています。
30メートル程離れた場所に、おそらく同一のジェネットのラメットと思われる開花していない稈も少数ありますが、この付近は万単位の枯れた稈が林立していました。

Re: 2018年の六甲山のスズダケ②

  • 神戸の望月
  • 2018/05/24 (Thu) 21:19:25
5月半ば頃になると、六甲山ではあちこちでスズダケのタケノコが出て来ます。

この画像は、この3年開花のない場所で、枯葉を突き破って25㎝くらいになっていたスズダケのタケノコです。

Re: 2018年の六甲山のスズダケ②

  • 神戸の望月
  • 2018/05/24 (Thu) 21:22:52
上の画像のような25㎝位の大きさのタケノコなら、ひよっとしてまだ中空でないのかなと思い、切ってみると既に中空でした。

Re: 2018年の六甲山のスズダケ②

  • 神戸の望月
  • 2018/06/02 (Sat) 16:28:07
去年、一昨年多くの稈が開花枯死した六甲山各地のスズダケの複数の群落で、わりと多くの回復笹らしきものが見つかりました。
画像は、似位谷上流域の万単位の稈からなるスズダケの集団の中で、今年出て来た地上茎です。
この場所は、ほとんど全ての稈が開花枯死し、今年開花した稈、未開花の稈で生き残っているものは20以下です。
渓流の側から、隣の白石谷との間の尾根まで、無数の枯れたスズダケの稈が、密な部分や疎らな部分を交えながら埋め尽くし、そこからまた、白石谷まで連綿と地上茎が続き、大規模な群落を作っています。
掘り上げると、地下茎から立ち上がっていて、実生の個体ではありませんでした。
他の場所で見つかった回復笹らしきものもいくつか掘ってみましたが、全て地下茎から立ち上がっていました。
今の所、実生の個体は見つかっていません。

Re: 2018年の六甲山のスズダケ②

  • 神戸の望月
  • 2018/06/02 (Sat) 16:38:51
『タケ・ササ図鑑』(内村悦三 2007)のイブキザサ(伊吹山が基準産地)の頁には、「開花しても実生または再生竹により修復可能である」と言う記述があります。
再生竹について言及はありませんが、回復笹と同義と考えられます。
画像は、尾根の岩場でのクロソヨゴとスズダケの2ショットです。
クロソヨゴは乾いた尾根の岩場などに生えていて、スズダケはそうした所を本来は好みません。
渓流の側から尾根まで栄養繁殖して大規模なジェネットを形成し、クロソヨゴと混生しているスズダケを六甲山の2ヵ所で見ています。
このクロソヨゴは雄花です。通常花冠は5裂しますが、この花は5裂しかかった4裂になっています。

Re: 2018年の六甲山のスズダケ②

  • 神戸の望月
  • 2018/06/02 (Sat) 21:31:58
白石谷の4つあるうちの1つの源流付近にあるスズダケの群落で、去年と今年、ごく少数の稈が開花しました。
そこには数千の稈があり、全てがクローンかどうかは分かりませんが、比較的密な集団になっています。
その場所で去年は7本、今年は5本(そのうちの2本は去年も開花)が開花しました。
それらはどれも近接しています。
これほど低い開花率なら、六甲山全域での大規模一斉開花とは無関係な、極小規模開花がたまたま時を同じくしてあったようにも思えます。

熟れて来た実を持つ、下垂するオオクマヤナギにスズダケの花序が絡んでいました。

Re: 2018年の六甲山のスズダケ②

  • 神戸の望月
  • 2018/06/04 (Mon) 22:58:34
私が開花しても枯れない稈があるかも知れないと思うようになったのは、今年このラメットを見てからです。
緑の矢印の所に花序があります。
青、赤、黒の矢印の所に今年伸び、先端に葉をつけた枝があります。
花茎を伸ばしたラメットは、通常葉をつける枝を展開しません。
花茎が葉を伴う例が稀にあることは以前紹介しましたが、花期以外では普通に見られる、枝を分けて葉をつけると言う挙動は、花期にはまずないです。
このような例は今の所3つだけ見ています。
標本に採るのは惜しいような気がしましたが、枯れてしまう可能性を考えると、やはり1つは採るべきと思いました。
残りは今後を見守っています。
次に青、赤、黒の矢印の所の拡大画像を示します。

Re: 2018年の六甲山のスズダケ②

  • 神戸の望月
  • 2018/06/04 (Mon) 23:00:00
これが青い矢印の所です。

Re: 2018年の六甲山のスズダケ②

  • 神戸の望月
  • 2018/06/04 (Mon) 23:01:14
これが赤い矢印の所です。

Re: 2018年の六甲山のスズダケ②

  • 神戸の望月
  • 2018/06/04 (Mon) 23:02:17
これが黒い矢印の所です。

Re: 2018年の六甲山のスズダケ②

  • 神戸の望月
  • 2018/06/05 (Tue) 23:17:37
白石谷の、標高790m付近にスズダケの未開花ラメットが数千の密な集団を形成している所があります。
その中で、1つのラメットだけが今年花茎を出しました。
6月2日の投稿で、やはり白石谷の極小規模開花の例を紹介しましたが、このような開花が一斉開花の前ぶれ、「走り咲き」になる例が複数報告されています。

この画像は、その唯一開花したラメットです。
中央部分に立ち上がっている花茎の右下に見えている葉は同一のラメットのものです。

Re: 2018年の六甲山のスズダケ②

  • 神戸の望月
  • 2018/06/05 (Tue) 23:25:04
この画像は、上の唯一開花したラメットの周辺の地表の様子を6月3日に写しています。
タケノコが全く出ていません。
さらに集団の中を探しましたが、タケノコは見つかりませんでした。
タケ・ササ類の一斉開花の数年前から生じるタケノコの数が減少することはよく知られています。
それは栄養器官へのエネルギーの投資が打ち切られ、花茎生産にその分も回すためだと考えられています。
そうだとすると、この集団は来年あたり一斉開花するのかも知れません。
(投稿前に、内容をプレビューして確認できます)