神戸市北区の丸山川流域のサイヨウザサ

  • 神戸の望月
  • 2019/12/14 (Sat) 08:59:03
神戸市北区の西丸山と東丸山の間を流れる丸山川流域のサイヨウザサを紹介します。
およそ数千株程度の規模の群落です。
11月下旬の観察なので、各器官の毛が脱落していることを前提に、慎重に同定しました。
アリマコスズ イナコスズ(フタタビコスズ)、サイヨウザサ(セッツコスズ)、ケナシカシダザサ(コウベコスズ)のコスズ四姉妹の比較は、来年の展開期に改めて観察し直してから行いたいと考えていますが、葉の細さに着目すると、種内変異を考慮しても、サイヨウザサはケナシカシダザサに、アリマコスズはイナコスズによく似ています。

画像は丸山川のすぐ側にあるサイヨウザサの群落です。

Re: 神戸市北区の丸山川流域のサイヨウザサ

  • 神戸の望月
  • 2019/12/14 (Sat) 09:00:39
わりと緑色をよく保っている葉もありました。

Re: 神戸市北区の丸山川流域のサイヨウザサ

  • 神戸の望月
  • 2019/12/14 (Sat) 09:03:39
前年の枯れた葉が目立つのは、草刈りなどの人為的な攪乱が少なくとも数年はないことを示しています。

Re: 神戸市北区の丸山川流域のサイヨウザサ

  • 神戸の望月
  • 2019/12/14 (Sat) 09:12:43
この群落では、稈高30㎝前後の株が多く見られました。
この1年生の稈もそれくらいの大きさです。
稈鞘の長さが節間の3分の2以上ほどはあり、節上部の膨らみが目立たない所にスズザサ属らしい特徴が出ています。
表面に光沢があり、ぱりっとした張りもある葉は枝先に2~3枚つき、その長さは15~18㎝、幅は2.5~3㎝くらいのものを多く確認しました。

Re: 神戸市北区の丸山川流域のサイヨウザサ

  • 神戸の望月
  • 2019/12/14 (Sat) 09:15:23
この標本は稈の中部と上部で2本の本年枝を移譲的に出しています。

Re: 神戸市北区の丸山川流域のサイヨウザサ

  • 神戸の望月
  • 2019/12/14 (Sat) 09:23:53
上の画像の標本の稈基部には目立つ大きさになった冬芽が出来ています。
その拡大画像がこれです。
すでに外鞘的に稈鞘を突き破っています。
この冬芽が成長して、枝が形成されていく前のこの段階で、外鞘的に分枝することが決まっていることになります。
同様の現象は今までいくつか紹介しましたが、注目に値することだと思います。
例外的と言って良い外鞘的分枝様式が見られる原因の一つです。

Re: 神戸市北区の丸山川流域のサイヨウザサ

  • 神戸の望月
  • 2019/12/14 (Sat) 23:01:42
「兵庫県立人と自然の博物館」(通称「人博」)の標本庫にサイヨウザサの花付の標本があります。
1995年6月3日、三宅氏が神戸市北区上谷上で採ったものです。
画像がその標本です。
秒の表記のない緯度、経度の示す辺りを1㎞ほどの幅をとって探索した結果、サイヨウザサは丸山川流域でのみ見つかったので、三宅氏の標本採集場所はおそらくそこだろうと思います。
元々、ネザサと同定されていたものが、2015年10月26日、支倉千賀子氏によってサイヨウザサと再同定されています。
稈が途中から切られているため、花茎が出ている節が、どの辺りなのか明確には分かりませんが、おそらく稈の中部付近の節から円錐花序が抽出しています。

Re: 神戸市北区の丸山川流域のサイヨウザサ

  • 神戸の望月
  • 2019/12/14 (Sat) 23:20:32
上の画像の標本に花がなくとも、サイヨウザサに相違ないと思いますが、やはり花の器官を確認出来ると、絶大な安心感があります。
開花周期が長く、花を見ることが稀なササ類ですが、先人の努力の積み重ねによって多くの種の花の特徴が確認されています。
サイヨウザサの花の特徴は、『日本のタケ亜科植物』によると、「円錐花穂は稈上方から抽出し、先端で疎らに3~7個の小穂を付けた小花梗を分枝する。小穂は黒褐色で扁平な線形~披針形で、長さ2~3㎝、8~10個の小花からなる。第一包穎は2.5㎜、第二包穎は6.5㎜で4㎜ほどずれて着く。外穎は長さ9㎜で先端がのぎ状に尖り、7~9脈、全体に褐色の微細な毛を散生し、縁に繊毛状の毛が出る。格子目なし。」と言うことです。
画像は第一包穎と第二包穎がずれてつくさまを写しています。

Re: 神戸市北区の丸山川流域のサイヨウザサ

  • 神戸の望月
  • 2019/12/14 (Sat) 23:45:17
現在、人博の標本庫には30点のサイヨウザサの標本があります。
全て元々は違った種に同定されていた標本を、支倉千賀子氏が近年サイヨウザサと再同定したものです。
管見によれば、三宅氏の花付の標本以外でサイヨウザサと考えられるものは1点もありませんでした。
一例を示します。
この画像の標本は、細見氏が1977年9月23日、朝来郡の段ヶ峰で採ったもので、チマキザサと同定されています。
1995年4月5日に村田源氏もチマキザサと同定しています。
そして2015年7月11日、支倉千賀子氏によってサイヨウザサと同定されています。
枝先に6枚の葉をつけたサイヨウザサは、あり得ないと思います。
それも長さが25㎝もある葉までつけたものは。
サイヨウザサは枝先に2~3枚の葉をつけます。
各器官の特徴を見るまでもなく、サイヨウザサである可能性は全くないと思います。
サイヨウザサもチマキザサも葉裏、稈鞘、葉鞘が無毛です。
この標本は、細見氏、村田氏同様に私もチマキザサだと考えます。
人博には、他にも支倉氏が再同定したアリマコスズやケナシカシダザサの標本がそれなりにありますが、私の目には全て違っているように見えました。
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