サイヨウザサとイナコスズと葉裏無毛のイナコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/09/24 (Tue) 00:30:49
六甲山のイナコスズ(フタタビコスズ)の自生地では、葉裏無毛の株も混生していることを先日報告しました。
そのことを更に詳しく調べるために再訪した日、サイヨウザサの群落が隣接してあることが判明しました。
この画像は、サイヨウザサとネザサが混生している様子を写しています。

Re: サイヨウザサとイナコスズと葉裏無毛のイナコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/09/24 (Tue) 00:33:11
通常タイプのイナコスズと葉裏無毛のイナコスズはこんな風に混生しています。

Re: サイヨウザサとイナコスズと葉裏無毛のイナコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/09/24 (Tue) 00:48:10
イナコスズとサイヨウザサの詳しい特徴はすでに述べたので、ここでは省きます。
葉裏と稈鞘と葉鞘の毛の3つに絞って考えると、葉裏には軟毛が密生し、稈鞘と葉鞘は無毛なのがイナコスズ、葉裏も稈鞘も葉鞘も無毛なのがサイヨウザサです。
と言うことは、葉裏無毛のイナコスズは、毛の特徴では、サイヨウザサと同じになります。
どちらも同じスズザサ属の小型のササで、分枝様式も同じです。
そこで次に、葉裏無毛のイナコスズとサイヨウザサの標本を比較します。

この両者の標本を比べた画像を見ると、イナコスズの方が葉の幅が広いのが分かります。

Re: サイヨウザサとイナコスズと葉裏無毛のイナコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/09/24 (Tue) 00:50:54
上の画像の黒い四角で囲った部分を拡大したのが、この画像です。
サイヨウザサの葉の基部は広いくさび形で、葉身は狭披針形です。

Re: サイヨウザサとイナコスズと葉裏無毛のイナコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/09/24 (Tue) 00:52:17
それぞれ異なる標本を比較しました。

Re: サイヨウザサとイナコスズと葉裏無毛のイナコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/09/24 (Tue) 01:04:35
上の画像の黒い四角の部分を拡大したのがこの画像です。
イナコスズの葉は基部が円形で、葉身は楕円状披針形です。
両者の特徴がよく出た典型品で比べました。
以上のことから、葉裏無毛のイナコスズは、サイヨウザサとイナコスズの交雑の結果生まれた可能性があると思います。

サイヨウザサは、おそらく細腰笹で、細腰とは古語で美人のことです。全ての器官に毛がなく、葉も稈も細いことからべっぴんさんのササと言う意味でつけられた洒落た名称です。

掘って地下茎の連結を確かめたことなどもあるのですが、今日の所はここまで。

Re: サイヨウザサとイナコスズと葉裏無毛のイナコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/09/24 (Tue) 05:32:15
イナコスズは2年生以上の枝につく古い葉でも、葉裏の毛はよく残っています。
早期に脱落することはありません。

上の画像で示したような、通常タイプと葉裏無毛タイプが混生している場所で、地下茎の連結を確かめるため、2つのタイプの株を起点にして、それぞれ2mほどの長さの地下茎をつなげて掘ってみました。
その結果、通常タイプは通常タイプとのみ、葉裏無毛タイプは葉裏無毛タイプとのみ連結していました。
地下茎の連結は、寿命や障害などで切れることもあり、観察例も少ないですが、1つの状況証拠にはなっています。


Re: サイヨウザサとイナコスズと葉裏無毛のイナコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/09/24 (Tue) 07:16:16
『日本のタケ亜科植物』ではイナコスズの異名同種として、フタタビコスズ(1948年 小泉源一の記載)の他に、オウミコスズ(1942年 小泉源一の記載)、ケバノカシダザサ(1942年 小泉源一の記載)などと共に、サイヨウイナコスズ(1942年 小泉源一の記載)も挙げられています。
興味深い和名です。

Re: サイヨウザサとイナコスズと葉裏無毛のイナコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/09/24 (Tue) 07:21:31
この上の地下茎の連結を確かめた所の画像の説明を忘れていました。
この画像は、サイヨウザサとイナコスズの通常タイプと葉裏無毛タイプが混生している様子です。
じっくり現場で見ても、サイヨウザサを見分けるのは容易ではありません。

Re: サイヨウザサとイナコスズと葉裏無毛のイナコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/09/27 (Fri) 22:42:38
葉裏無毛のイナコスズとサイヨウザサの、葉の形以外の相違点を挙げます。
葉裏無毛のイナコスズには小さな放射状の肩毛があります。
イナコスズも同様です。
サイヨウザサは、通常肩毛が発達しません。
画像は、9月上旬に撮影した、1年生の葉裏無毛のイナコスズの肩毛です。
早期に脱落するらしく、ほとんどの株には残っていませんでした。

Re: サイヨウザサとイナコスズと葉裏無毛のイナコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/09/27 (Fri) 22:50:08
他には、葉裏無毛のイナコスズとイナコスズには、節に長毛があり、稈鞘を被っていない部分の稈の表面に、逆向きの細毛があります。
サイヨウザサは、どちらの部分も無毛です。
画像は、1年生の葉裏無毛のイナコスズの、節と稈鞘を被っていない部分の稈を写しています。
節の毛は2年生以上の稈や枝でも、それなりに残っています。
やはり撮影は9月上旬です。

Re: サイヨウザサとイナコスズと葉裏無毛のイナコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/09/27 (Fri) 22:53:29
この画像は、イナコスズの節と、稈鞘を被っていない部分の稈の表面の毛の様子を写しています。
9月上旬の撮影です。

Re: サイヨウザサとイナコスズと葉裏無毛のイナコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/09/27 (Fri) 22:58:01
この画像は、1年生の葉裏無毛のイナコスズの節の毛のさまを写しています。
開いた毛と寝た毛があります。
節の下部の稈鞘が長く、節に被っています。
稈上部の節ではしばしば見られることです。
9月上旬の撮影です。

Re: サイヨウザサとイナコスズと葉裏無毛のイナコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/09/28 (Sat) 06:25:49
稈鞘の縁の毛が、イナコスズと葉裏無毛のイナコスズでは、顕著に長く、指で稈鞘に触れるとそれと分かります。
サイヨウザサの稈鞘の縁の毛は、1㎜もないほど短く、触れてもそれを感じることはありません。
画像は9月上旬撮影の、葉裏無毛のイナコスズの稈鞘の縁の毛です。

Re: サイヨウザサとイナコスズと葉裏無毛のイナコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/09/30 (Mon) 22:19:53
この3者混生地での、サイヨウザサのみからなる群落はこんな様子です。

Re: サイヨウザサとイナコスズと葉裏無毛のイナコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/09/30 (Mon) 22:22:59
この画像は、サイヨウザサと葉裏無毛のイナコスズの混生状態を写しています。
赤い4つの矢印の示すのが葉裏無毛のイナコスズで、それ以外のササの葉は、全てサイヨウザサです。

Re: サイヨウザサとイナコスズと葉裏無毛のイナコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/09/30 (Mon) 22:31:47
この画像は、3者(3種としていいかどうかは不明なので、とりあえず3者 としています)の混生状態を写しています。
1つの青い矢印がイナコスズを、2つの赤い矢印が葉裏無毛のイナコスズを示しています。
それ以外のササの葉は、全てサイヨウザサです。
葉裏無毛のイナコスズとイナコスズの違いは、今の所分かっている範囲では、葉裏の毛の有無だけです。
サイヨウザサとその両者の違いは既に述べました。
見慣れれば、葉の幅の細い太いでそれなりに見当がつきますが、紛らわしい時は、節の毛で判断出来ます。

Re: サイヨウザサとイナコスズと葉裏無毛のイナコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/10/12 (Sat) 15:40:38
サイヨウザサとイナコスズと葉裏無毛のイナコスズの混生地は、神戸市北区の修法ヶ原(しおがはら)池の北側にありますが、その周辺での3者の分布状況を地図で表したのがこの画像です。
赤いギザギザ線がイナコスズ、青いギザギザ線が葉裏無毛のイナコスズ、紫のギザギザ線がサイヨウザサの分布域を示しています。
サイヨウザサの群落の周縁部分で3者が混生しています。
サイヨウザサの群落を境目にするかのように、その南側にはイナコスズ、北側には葉裏無毛のイナコスズが分布しています。
洞川(どうがわ)湖と修法ヶ原池をつなぐ、仙人谷には、ごく少数の葉裏に毛のある、通常タイプのイナコスズも分布しており、修法ヶ原池の西側でもごく少数の葉裏無毛のイナコスズを確認していますが、全体的な3者の分布状況は上に述べた通りです。
丸山湿原周辺のアリマコスズと同様に、イナコスズも水の側の湿った場所を好むようです。
地図の右下に再度山(ふたたびやま)と書かれ、山の記号がありますが、その辺りが再度山の山頂になります。

Re: サイヨウザサとイナコスズと葉裏無毛のイナコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/10/12 (Sat) 15:43:45
この画像は、洞川湖の南側(上の分布図のA地点)にある、水のすぐ側の葉裏無毛のイナコスズを写しています。

Re: サイヨウザサとイナコスズと葉裏無毛のイナコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/10/12 (Sat) 15:47:26
この画像は、洞川湖の北西(上の分布図のB地点)の葉裏無毛のイナコスズを写しています。
川の流れを西にたどって探しましたが、ここより西では見つかりませんでした。

Re: サイヨウザサとイナコスズと葉裏無毛のイナコスズ

  • 神戸の望月
  • 2019/10/12 (Sat) 15:54:24
この画像は、アカマツの樹皮の隙間を登るサイヨウザサです。
サイヨウザサの群落の中で見られます。
一見すると、1本の枝先に5枚の葉がついているようにみえますが、よく見れば、3枚の葉をつけた枝と2枚の葉をつけた枝がくっついています。
サイヨウザサで、1本の枝先に4枚以上の葉をつけているものを見つければ、ちょっとした発見です。

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