さてオオフユイチゴです。
栄養繁殖するため、正確な個体数は不明ですが、この谷にはオオフユイチゴは100ラメット程自生しています。
オオフユイチゴは大型のフユイチゴ類で、大きいものでは茎は2m位にはなり、枝もよく分けます。
この谷の個体は茎の長さが数十㎝位のものがほとんどです。
初めて出会った年には、全く開花結実がありませんでした。
原因は日照不足だと考えられます。
同程度の受光量なら、フユイチゴやミヤマフユイチゴやアイノコフユイチゴは一定数は開花します。
この谷にはフユイチゴも分布していますが、同じようなうす暗い所でよく開花結実しています。
やはりより南方系のオオフユイチゴは、花芽の形成により多くの光を必要とするようです。
他の3ヵ所の自生地はここよりも日照条件が良いため、ある程度は開花します。
この谷のオオフユイチゴの標本を採るため、一昨年分布量の多い場所に陰を作っている常緑樹の枝を払うと、去年そこで開花が見られました。
この谷では50ラメット程のややまばらな集団が2つ、200m程離れて存在していて、今ほど遷移が進みうす暗くなる前には、種子繁殖していたこともあったと思います。
オオフユイチゴは耐陰性は強く、栄養繁殖のみで何年も集団が維持されていたようです。
先ほど触れたフユイチゴはオオフユイチゴとは混生せず、より上流側に点々と数十ラメット生育しています。
興味深いことに、この谷のフユイチゴは全て茎に小さいトゲがあるものばかりです。
フユイチゴの茎のトゲは指で触れてもほとんど痛みがなく、少しひっかかりを感じるようなものです。
葉裏の脈上のトゲの有無がオオフユイチゴとフユイチゴを識別する最も分かりやすいポイントです。
それがあればオオフユイチゴ、なければフユイチゴです。
画像はこの冬に写したこの谷のオオフユイチゴです。崖地で下垂しています。この場所は標本を採るために周囲の枝うちをした所で、やはりここ以外では今年も開花はなかったです。